
魂は受け継がれる。
Patrol Vessel SOYA Last Voyage
巡視船そうや ― 最後の航海
本取材および撮影は、海上保安庁の広報活動に資する写真素材の提供を目的としています。
写真の公開に際しては、海上保安庁(第一管区海上保安本部総務部)の承認を得ております。本写真の著作権は出口慎也写真事務所が保有しております。
北海の守護神
『巡視船そうや』海を駆けた46年の誇り
幾多の嵐を乗り越え、北の海に立ち続けた一隻の船があった。
—それは、北の海を護り続けた者たちの物語—
1978年、極寒のオホーツク海に一隻の巡視船が誕生しました。その名は『巡視船そうや』。
日本最北の海を守るため、救難・警備・観測という三位一体の使命を背負い、そうやは海へと飛び出しました。
海上保安庁初のヘリコプター搭載型砕氷巡視船として46年間にわたり北の最前線を駆け抜けたその歴史と誇りを、
ここに刻みます。
ー極限の現場に立ち続けた46年ー
冬になれば、海氷(流氷)がオホーツク海を埋め尽くします。
猛吹雪が吹き荒れ、気温は氷点下20度を下回る過酷な世界。
それでも、巡視船そうやは決して立ち止まりませんでした。
漁船の救助、密漁船の監視、環境調査、そして氷の海での観測任務。
時に荒波に揉まれ、時に凍てつく氷塊に阻まれながらも、そうやは北の海を守り続けました。
初代「宗谷」の名を引き継ぎ、1978年11月22日に日本鋼管鶴見造船所で竣工したこの船は、
総トン数約3,100トン、最大速力21ノット、1メートルの海氷を突破可能な砕氷能力を誇ります。
約70名の乗員と共に、ヘリコプター(ベル212やMH575)を搭載し、広域捜索や洋上救急を可能にした巡視船そうや。
2011年の東日本大震災での救助活動や、ロシア近海での国際協力任務など、その活躍は多岐にわたりました。
ー老朽化と最後の使命ー
老朽化が進み、船齢40年を超えた巡視船そうやは、2010年に大規模な延命工事を経てさらに15年の活躍を重ねました。
しかし、2025年、46年の長きにわたる役目を終える時がきました。
最後の使命として、北海道大学低温科学研究所と海上保安庁の共同調査に参加。
オホーツク海の海氷観測を行い、最後の航跡を刻みました。
この最終任務は、気候変動研究や未来の環境保護に貢献する貴重なデータを提供。
巡視船そうやは、北の海が問いかける「私たちは何を守り、どう未来へ繋ぐのか」
という命題に、最後まで応え続けました。
ー『巡視船そうや』の魂は消えないー
巡視船そうやの魂は決して消えません。
46年間の知見と誇りは、後継船へと引き継がれます。
2024年9月2日、ジャパンマリンユナイテッド磯子工場で進水した新「そうや」(PLH-01)が2025年度中の就役を控え、
新たな「北の守護神」として誕生する日が近づいています。
初代「宗谷」の運用期間(約40年4か月)を上回り、海上保安庁の現役巡視船として最長記録を樹立した巡視船そうや。
その歴史は、尖閣諸島警備や北朝鮮漂流船対応など、日本の海上安全を支えた証でもあります。
ー次なる時代への扉ー
今、巡視船そうやの誇り高き歴史が幕を閉じ、次なる時代への扉が開かれます。
砕氷能力とヘリコプター運用で極寒の海を駆け抜けた46年。
その物語は、海上保安庁の未来を担う新世代の巡視船へと受け継がれ、語り継がれていくでしょう。
巡視船そうや―北海の守護神として、日本の海に刻まれた不滅のレガシー。
その名は、永遠に海に響き続ける。